高校受験の数学は「中学に入ってからしっかり頑張れば間に合う」と考える保護者も少なくありません。
もちろん、中学生になってから努力することは大切です。理科や社会といった暗記科目は、勉強時間に比例して成績が伸びやすい教科です。また英語も、本格的な学習は中学から始まるため、多くの生徒がほぼ同じスタートラインに立ちます。
しかし数学は事情が少し違います。中学数学は、小学生の算数の理解を土台にして作られているため、本来は中学から始まる教科であっても、実際にはスタート地点ですでに大きな差がついていることが少なくありません。
しかも、その差に保護者が気づいていないケースも多いのです。
「小学生の算数なら大丈夫」と思っている方も多いかもしれません。
たとえば次のような問題です。
・0.5 × 0.4
・時速60kmで4時間進んだ距離
・1000円の75%引き
こうした問題を見ると、「これくらいならうちの子でも簡単にできる」と感じる方も多いでしょう。
しかし、実際に高校受験を見据えると、小学生の算数にはもう一段深い理解が求められます。特に中堅以上の高校を目指す場合、学校の教科書レベルだけではなく、中学受験の導入レベルに近い算数的思考力が必要になる場面も少なくありません。
ところが、このレベルの算数は「中学受験をしない生徒」にとって盲点になりやすいのです。
実際、中学で数学が苦手になる生徒の多くは、方程式や関数といった新しい内容そのものにつまずいているわけではありません。原因をたどると、分数・割合・文章問題といった小学生算数の理解不足に行き着くケースが非常に多いのです。つまり、中学数学の難しさの裏には、小学生算数の理解の差が隠れていると言えます。
さらに高校受験では、英語や国語よりも数学のほうが得点差がつきやすい教科です。基礎がしっかりしている生徒は高得点を取りやすい一方で、土台が不十分な場合は点数が伸びにくくなります。このため、算数の理解度は高校受験の結果にも大きく影響する重要な要素になります。
だからといって、中学受験をしない小学生が中学受験の算数に真正面から取り組むのは、学習負担が大きすぎる場合もあります。本当に重要なのは、中学受験算数の中から「高校受験につながる部分」を選んで学ぶことです。
しかし実際には、「中学受験はしないが、学力をしっかり伸ばしたい」という小学生向けの学習環境は、意外なほど少ないのが現状です。
だからこそ、小学生のうちに適度な負荷をかけながら算数の思考力を育てることは、将来の学力を大きく伸ばすチャンスでもあります。
本記事では、小学生算数が高校受験を左右すると言われる理由をわかりやすく解説しながら、どのような算数の力が中学数学や高校受験につながっていくのかを整理していきます。
第1章 数学が苦手になる原因の多くは小学生算数にある
中学で数学が苦手になる生徒は決して少なくありません。多くの場合、「中学数学が急に難しくなった」と感じることが原因だと考えられがちです。
しかし実際には、その原因が中学数学そのものにあるとは限りません。むしろ、小学生の算数の理解不足が後になって表面化しているケースが非常に多いのです。
小学校の算数は一見すると簡単に見えることが多く、テストでも大きな差がつきにくいため、「算数は問題なくできている」と思われがちです。しかし、教科書レベルの理解と、応用問題に対応できる理解のあいだには意外と大きな差があります。
この差は小学生のうちは目立ちにくいものの、中学に入って数学の内容が少しずつ発展していくと、一気に学力差として現れることがあります。
そこでこの章では、速さや割合といった具体的な単元を例に、教科書レベルの算数と応用レベルの算数の違いを見ながら、小学生算数の理解がなぜ中学数学の成績に大きく影響するのかを整理していきます。
1 教科書レベルと応用レベルの差が大きい小学生算数
小学校算数が簡単と思っている保護者や生徒も多いですが、実際には、教科書レベルと試験で求められる応用レベルでは次のような差があります。
分数の計算
教科書レベル
\[
\frac{2}{3}+\frac{1}{4}
\]
\[
1\frac{1}{6}\times\frac{7}{3}
\]
応用レベル
\[
\left\{
\frac{5}{6}
-\frac{7}{9}
+\left(
1\frac{3}{4}
-\frac{11}{12}
+\frac{2}{3}
\right)
\right\}
\div
\left(
\frac{7}{15}
-\frac{2}{5}
\right)
\]
割合
教科書レベル
1500円の15%はいくらですか。
1200gの20%増しは何gですか。
応用レベル
10%の食塩水1kgに、200gの食塩水を入れると、12%の食塩水ができました。何%の食塩水を入れたことになりますか。
ある商品に、仕入れ値の2割の利益があるように定価をつけましたが、あまり売れないので、定価の1割引きにして売ることにしました。そのときの売値が16200円でした。仕入れ値を求めなさい。
速さ
教科書レベル
時速60kmで3時間進むと何km進みますか。
応用レベル
秒速17m、長さ125mの列車と、秒速13m、長さ145mの列車がすれ違うには、何秒かかりますか。
整数問題
教科書レベル
ある数を7で割ると、商が8、あまりが3でした。この数はいくつですか。
応用レベル
ある整数Nを 7で割ると5あまり、9で割ると3あまります。このような整数のうち、100より小さい最大の数を求めなさい。
2 高校受験組が応用レベルの算数を学ぶ場がほとんどない
小学生の算数には、実は大きな「学習の空白地帯」があります。それは、中学受験をしないが、学力の高い子どもが算数を伸ばす環境がほとんどないという点です。
現在の学習環境は、大きく分けると二つに分かれています。一つは学校の教科書レベルの学習、もう一つは中学受験を前提とした高度な算数です。しかし、高校受験を目指す多くの小学生は、このどちらにも完全には当てはまりません。
学校の授業や一般的な補習型の塾では、基本的に教科書レベルの内容が中心になります。そのため、算数が比較的得意な子どもにとっては、問題が簡単すぎて思考力を伸ばす機会が少なくなります。
一方で、中学受験塾の算数は、受験対策として非常に高度で、学習量も膨大です。高校受験を前提としている家庭にとっては、負担が大きすぎる場合も少なくありません。
この結果、「中学受験はしないが、算数の力はしっかり伸ばしたい」という小学生にとって、適切な学習環境が見つかりにくい状況が生まれています。これが、小学生算数の理解の差を広げる大きな要因の一つになっています。
3 計算・割合・図形の理解不足が中学1年の後半で一気に表面化する
小学生算数の理解不足は、中学に入った直後には目立たないこともあります。中学1年の最初の単元は、正負の数や文字式といった計算中心の内容が多く、比較的得点しやすい問題も多いからです。
しかし、中学1年の後半になると状況が変わります。方程式の文章問題や比例・反比例、図形の応用問題などが登場すると、小学生算数の理解不足が一気に表面化することがあります。
特に影響が大きいのが、計算力・割合の理解・図形感覚の三つです。分数や小数の計算があいまいなままだと方程式の計算でミスが増え、割合の理解が不十分だと比例や関数の問題が難しく感じられます。また図形の基本的な性質が整理できていないと、中学の図形問題でも苦戦することになります。
このように、中学数学のつまずきは突然生まれるものではありません。多くの場合、小学生算数で身につけるべき基礎が十分に理解されていないことが原因になっています。
4 「基礎ができているつもり」が数学苦手を生む
数学が苦手な生徒の多くは、自分がどこでつまずいているのかを正確に把握できていないことが少なくありません。特に多いのが、「基礎はできているはずなのに数学ができない」と思い込んでいるケースです。
小学生の算数は、テストの問題が比較的シンプルなため、答えが合っていれば理解できているように見えることがあります。しかし実際には、計算の仕組みや数量の関係を十分に理解しないまま、解き方だけを覚えていることも少なくありません。
このような状態でも小学生の段階では大きな問題にならないことがありますが、中学数学になると急に問題が解けなくなることがあります。
問題なのは、この「理解の穴」に本人が気づきにくいことです。中学で数学が苦手になっても、「小学生の算数は普通にできていたはずだ」と思い込んでしまい、原因を中学数学の難しさや自分の能力の問題だと考えてしまうのです。
その結果、「数学はセンスのある人だけができる科目だ」「自分には数学脳がないのだ」と決めつけてしまい、本来必要な対策を取らないまま苦手意識だけが強くなっていきます。そして、苦手な状態を放置してしまうことで、さらに理解の差が広がってしまうのです。
しかし実際には、多くの場合、数学が苦手になる原因は特別な才能の問題ではありません。小学生算数の理解を整理し直すことで、中学数学の理解が一気に進むケースも少なくありません。だからこそ、「基礎はできているつもり」という思い込みを一度見直し、算数の土台を改めて確認することが重要になります。
第2章 高校受験は「数学で差がつく」入試である
高校受験というと、英語・国語・数学・理科・社会の5教科で競う入試というイメージを持つ人が多いでしょう。しかし実際の入試結果を見ていくと、合否を分ける決定的な教科は数学になることが非常に多いです。
英語や国語は比較的点数がまとまりやすい一方で、数学は理解度によって得点が大きく変わります。そのため、数学が得意な生徒は安定して高得点を取りやすく、逆に苦手な生徒は大きく点数を落とすことがあります。この差が、最終的な合否を分けることにつながるのです。
ここでは、高校受験において数学がどのように差を生む教科なのかを整理していきます。
1 公立高校入試では数学が合否を左右する
公立高校入試では、基本的に5教科の合計点で合否が決まります。そのため一見すると、どの教科も同じように重要に見えるかもしれません。
しかし実際には、英語・国語・社会・理科はある程度点数がまとまりやすい教科です。勉強時間を確保すれば一定の得点が取りやすく、多くの受験生が似たような点数帯に集まりやすいという特徴があります。
一方、数学は理解の差がそのまま点数差になりやすい教科です。基礎がしっかりしている生徒は安定して高得点を取ることができますが、途中で理解があいまいになると一気に点数が下がることがあります。
その結果、受験生の中で数学の得点差が大きくなり、最終的な合否を分ける決定的な教科になりやすいのです。
特に公立高校入試では、数学の問題は「基礎問題+応用問題」という構成になっていることが多く、応用問題が解けるかどうかで順位が大きく変わることがあります。このような問題構成も、数学が差を生みやすい理由の一つです。
2 上位高校ほど数学の得点差が大きい
この傾向は、上位高校の入試になるほどさらに強くなります。
上位校を目指す受験生は、基本問題で大きなミスをすることが少なくなります。そのため、英語や国語でも多くの受験生が一定以上の得点を取るようになります。
もちろん、上位校の入試では英語の問題自体も難しくなります。しかし英語は、長文読解や文法問題などで部分点を積み重ねやすく、受験生の得点はある程度まとまった範囲に分布することが多い教科です。
一方で数学は事情が少し異なります。数学では難度の高い応用問題や思考力を問う問題が出題されることが多く、ここで得点差が大きく広がります。同じ試験を受けていても、数学で満点近く取る生徒もいれば、半分程度しか取れない生徒も出てくるのです。
その結果、上位校の入試では数学の得点が受験生の順位を大きく左右するケースが少なくありません。
実際、多くの進学校では「数学ができる生徒が合格しやすい」と言われることがあります。これは数学が特別に重要な教科だからというよりも、数学が最も得点差を生みやすい教科だからです。
3 英語・国語より数学は差がつきやすい
英語や国語は、ある程度の学習を積めば安定して得点できる教科です。英語は単語や文法の知識、国語は読解の基本的なパターンを身につければ、大きく点数を落とすことは少なくなります。
一方で数学は、理解が積み重なる教科です。途中の単元でつまずくと、その後の内容にも影響が出てしまいます。また、単に公式を覚えるだけでは対応できない問題も多く、思考力や問題の構造を読み取る力が必要になります。
そのため、数学では「理解できている生徒」と「理解があいまいな生徒」の差がそのまま点数に表れやすいのです。
さらに数学の問題は、一問ごとの配点が大きいことも多く、一つの問題が解けるかどうかで点数が大きく変わることもあります。このような特徴も、数学が得点差を生みやすい理由の一つです。
こうした理由から、高校受験では数学が最も差がつきやすい教科と言われています。そして、この数学の力の土台となっているのが、小学生の算数なのです。
第3章 小学生算数で特に重要な単元
中学数学でつまずく原因をたどると、特定の小学生算数の単元に行き着くことがよくあります。算数の内容は幅広いですが、すべてが同じように中学数学へ直結するわけではありません。実際には、いくつかの重要な単元が中学数学の土台となっています。
ここで理解があいまいなまま中学に進むと、方程式・関数・図形といった単元で急に問題が解けなくなることがあります。逆に言えば、これらの単元をしっかり理解しておくことで、中学数学の理解は大きくスムーズになります。
ここでは、特に重要な五つの単元を整理していきます。
1 分数と小数
分数と小数は、小学生算数の中でも最も基本となる計算分野です。そして、この単元の理解度は中学数学の計算力に直結します。
中学に入ると、方程式や関数の計算では分数や小数を含む式を扱うことが多くなります。もし分数の計算があいまいなままだと、式の変形や計算の途中でミスが増え、問題の本質とは関係のないところでつまずいてしまいます。
数学が苦手な生徒の答案を見ると、実は方程式そのものではなく、分数計算でミスをしていることも少なくありません。つまり、中学数学の計算の安定感は、小学生段階での分数と小数の理解によって大きく左右されるのです。
~小学生の間にマスターしておきたいレベルの計算問題です。~
$$
\left\{
\frac{3}{4}
-\frac{5}{6}
+\left(
1\ \frac{2}{3}
-\frac{7}{8}
\right)
\right\}
\div
\left(
\frac{5}{12}
-\frac{1}{3}
\right)
$$
2 割合と比
割合は、小学生算数の中でも理解の差が出やすい単元です。「何%」「何割」「何倍」といった表現を、単なる計算手順として覚えてしまうと、本当の意味を理解しないまま先に進んでしまうことがあります。
しかし割合の考え方は、中学数学の比例・反比例や関数の理解に深く関係しています。割合の意味を数量の関係として理解している生徒は、比例関係やグラフの問題を自然に理解できます。
逆に割合の理解が不十分な場合、比例や関数の問題が急に難しく感じられることがあります。割合は単なる計算単元ではなく、数量関係を理解するための重要な土台なのです。
~中学入試の基礎レベルだが、解けない小学生は多い~
持っていたお金の\( \frac{3}{4} \)で本を買い、残りの お金の\( \frac{1}{3} \)でノートを買ったら、100円残りました。はじめに持っていたお金はいくらですか。
3 速さ
速さの単元は、「距離・時間・速さ」という三つの量の関係を扱う分野です。一見すると日常的な計算問題のように見えますが、実際には数量の関係を式で整理する力が求められます。
この考え方は、中学の方程式の文章問題に非常に近い構造を持っています。速さの問題を図や式で整理する経験がある生徒は、中学の文章問題でも数量関係を整理しやすくなります。
逆に速さの問題を「公式に当てはめるだけの計算」として覚えてしまうと、中学の文章問題で苦戦することがあります。速さの単元は、数量関係を整理する思考力を育てる重要な練習でもあるのです。
~中学入試の基礎レベルだが、中1で方程式の応用を習うまでしっかり忘れている生徒も多い~
家から駅までの距離は1500mです。花子さんは最初の600mを毎分75mの速さで歩き、残りの道のりを毎分100mの速さで歩きました。家を出てから駅に着くまでにかかった時間は何分ですか。
4 図形
図形の単元は、小学生算数の中でも思考力が求められる分野です。角度、面積、体積などを扱う問題では、図を見て情報を整理する力が必要になります。
中学数学でも、図形問題は重要な分野の一つです。三角形や円の性質、合同や相似といった内容は、高校受験でも頻出の単元になります。
小学生の段階で図形をしっかり理解している生徒は、中学の図形問題でも自然に考えることができます。一方で、図形を計算問題としてだけ処理してきた場合、中学の図形問題で急に難しさを感じることがあります。
5 規則性
規則性は、小学生算数の中でも特に思考力が問われる単元です。並び方や数の変化のパターンを見つけ、そこから規則を読み取る力が求められます。
この単元は、中学受験では頻出のテーマですが、中学受験をしない生徒は十分に取り組む機会が少ないことがあります。そのため、高校受験組の中には規則性の問題を苦手とする生徒も少なくありません。
しかし規則性の問題は、中学数学の関数や数列の考え方につながる重要な思考トレーニングでもあります。数の変化を観察し、そこから法則を見つける力は、数学全体を理解する上で非常に大切な能力です。
このように、小学生算数には中学数学の土台となる重要な単元がいくつもあります。これらの単元をしっかり理解しているかどうかが、中学数学の理解度、そして高校受験での数学の得点力に大きく影響してくるのです。
~規則性ってどんな分野?~
次のように、あるきまりにしたがって数が並んでいます。
2,6,10,14,18,22,26,・・・154,158
次の問に答えなさい。
(1)1番目から7番目までの数の和はいくつですか?
(2)1番目から最後までの数の和はいくつですか。
『中学入試分野別集中レッスン算数 規則性』(文英堂)10ページより引用
第4章 算数が強い子は中学で数学が伸びる理由
中学数学は、小学生算数とはまったく別の教科のように見えることがあります。しかし実際には、多くの内容が算数の延長線上にあります。
小学生の段階で算数をしっかり理解している生徒は、中学数学でも自然に理解が進みやすく、学力が伸びやすい傾向があります。
ここでは、算数が得意な子どもが中学で数学を伸ばしやすい理由を三つの視点から見ていきます。
1 方程式が「翻訳作業」になる
中学数学で最初に大きな壁になるのが、方程式の文章問題です。文章で書かれた状況を式に直すことが難しく感じられる生徒は少なくありません。
しかし、算数の文章問題に慣れている生徒にとって、方程式はそれほど特別なものではありません。文章の中にある数量関係を整理し、それを式に置き換えるという作業は、小学生の算数でも繰り返し経験しているからです。
そのため、算数が強い生徒にとって方程式は「新しい数学」ではなく、文章を式に翻訳する作業のように感じられることが多いのです。数量の関係を読み取る力がすでに身についているため、式を立てること自体に大きな抵抗がありません。
一方で、小学生算数の文章問題にあまり慣れていない場合、方程式の問題は「何を式にすればよいのかわからない」という状態になりやすく、数学が急に難しく感じられる原因になります。
2 関数の理解がスムーズ
中学数学のもう一つの重要なテーマが関数です。比例・反比例やグラフなど、数の変化の関係を扱う単元ですが、この内容も算数の理解と深く結びついています。
算数の段階で、割合や速さ、規則性といった単元をしっかり理解している生徒は、「数量の関係」を考えることに慣れています。そのため、比例関係やグラフの意味も比較的自然に理解できます。
例えば、「ある量が2倍になると別の量も2倍になる」といった関係は、算数の割合や速さの問題でも繰り返し登場する考え方です。こうした経験がある生徒にとって、関数は突然現れた難しい概念ではなく、これまで扱ってきた数量関係を整理して表したものに見えるのです。
その結果、関数の問題でも「何を表しているのか」を理解しやすくなり、グラフや式の意味を読み取る力が伸びやすくなります。
3 図形問題に強くなる
高校受験の数学では、図形問題が大きな得点差を生むことがよくあります。特に角度や図形の性質を利用して考える問題では、単なる計算力だけでなく、図を見て考える力が求められます。
小学生の段階で図形問題にしっかり取り組んできた生徒は、図を見て情報を整理することに慣れています。図形の特徴を観察し、どの情報が重要なのかを考える習慣が身についているため、中学の図形問題にも対応しやすくなります。
また、算数の図形問題では、補助線を引いたり図を分解して考えたりする場面もあります。このような経験は、中学数学の合同や相似、角度の問題などにも大きく役立ちます。
逆に、小学生の段階で図形を計算問題としてだけ処理してきた場合、中学の図形問題で「どこから考えればよいのかわからない」という状態になりやすくなります。
このように、小学生算数で身につけた力は、中学数学のさまざまな場面で土台となります。算数が強い子どもは、新しい内容を学ぶときにも過去の理解を土台にして考えることができるため、結果として数学の学力が伸びやすくなるのです。
第5章 算数が弱いと高校受験で起きること
小学生算数の理解が不十分なまま中学に進むと、その影響は中学数学だけにとどまりません。数学は中学3年間を通して積み上がっていく教科であるため、早い段階でつまずくと、その後の学習にも大きな影響が出てしまいます。
そして、その結果として高校受験にもさまざまな形で影響が現れます。ここでは、算数の土台が弱い場合に高校受験で起こりやすい三つの問題を見ていきます。
1 数学が苦手科目になる
小学生算数の理解が不十分な場合、中学数学のどこかの段階で急に問題が解けなくなることがあります。特に多いのが、中学1年の後半から中学2年にかけてです。
この時期になると、方程式の文章問題、比例・反比例、図形の応用問題などが登場し、単純な計算だけでは解けない問題が増えてきます。ここで小学生算数の理解不足が表面化すると、数学の問題が急に難しく感じられるようになります。
一度苦手意識を持ってしまうと、数学の勉強自体を避けるようになり、さらに理解が進まなくなるという悪循環に入りやすくなります。数学は積み重ねの教科であるため、途中の単元が理解できないまま進むと、その後の内容もますます難しく感じられてしまうのです。
こうして数学は「苦手科目」になり、高校受験において大きな弱点になってしまうことがあります。
2 内申点が下がる
高校受験では、入試当日の点数だけでなく、学校の成績である内申点も重要になります。多くの公立高校では、内申点と入試点の両方を総合して合否が判断されます。
数学が苦手になると、定期テストの点数が安定しなくなり、通知表の評価にも影響が出ることがあります。特に数学は、理解が不十分だとテストで点数を取りにくい教科です。努力して勉強しても、思うように結果が出ないことも少なくありません。
その結果、数学の評定が下がり、内申点全体にも影響が出てしまうことがあります。内申点は高校受験において非常に重要な要素であるため、数学の成績が低い状態が続くと、受験全体に不利に働く可能性があります。
3 高校選択の幅が狭くなる
数学が苦手な状態が続くと、最終的には高校選びにも影響が出ることがあります。
高校受験では、合格可能性を考えながら志望校を決めることになります。その際、数学の得点が大きく足を引っ張っていると、本来なら狙えるはずだった高校を受験できなくなることもあります。
特に中堅以上の高校では、数学で一定以上の得点が取れることが前提になる場合が多く、数学の点数が低いと志望校の選択肢が限られてしまうことがあります。
もちろん、数学が苦手でも他の教科でカバーすることは可能です。しかし、数学は得点差がつきやすい教科であるため、大きく苦手な状態のまま受験を迎えると不利になりやすいのも事実です。
このように、小学生算数の理解不足は、中学数学の苦手意識だけでなく、内申点や志望校選びにも影響する可能性があります。だからこそ、早い段階で算数の土台をしっかり整えておくことが、高校受験に向けた重要な準備になるのです。
第6章 小学生算数は「高校受験のスタートライン」
高校受験というと、多くの家庭では中学生になってから本格的に意識し始めるものです。しかし実際には、高校受験で求められる学力の土台は、小学生の段階でかなりの部分が形づくられています。
特に数学に関しては、小学生算数の理解がそのまま中学数学の理解につながるため、小学生の学習が高校受験の準備になっていると言っても過言ではありません。ここでは、小学生算数と高校受験の関係を三つの視点から整理していきます。
1 中学受験をしなくても算数は重要
小学生の算数というと、「中学受験をする子どもが力を入れるもの」というイメージを持つ人も少なくありません。そのため、中学受験をしない場合は、学校の教科書レベルをしっかり理解していれば十分だと考えられることもあります。
しかし実際には、高校受験を目指す場合でも算数は非常に重要な教科です。中学数学は、小学生算数で身につけた計算力や思考力を前提として進んでいきます。算数の理解がしっかりしている生徒は、中学数学でもスムーズに学習を進めることができます。
つまり算数は、中学受験をするかどうかに関係なく、将来の数学力を支える基礎として重要な役割を持っているのです。
2 小学生算数=高校受験準備
高校受験の準備というと、多くの人は中学3年生の受験勉強を思い浮かべるかもしれません。しかし、数学という教科に限って言えば、その準備は小学生の算数からすでに始まっています。
分数や割合、速さ、図形、規則性といった算数の単元は、中学数学のさまざまな分野の土台になっています。算数の段階で数量の関係を理解する力や、図を見て考える力が身についている生徒は、中学数学でも新しい内容を理解しやすくなります。
逆に算数の理解があいまいなまま中学に進むと、数学の学習が途中で難しく感じられることがあります。その意味では、小学生算数は単なる基礎学習ではなく、高校受験につながる長い学習の第一段階とも言えるでしょう。
3 中学生になる前に差は始まっている
中学生になると、学校の定期テストや模試などを通して学力差が目に見える形で現れます。しかし、その差の多くは中学に入ってから突然生まれるわけではありません。
算数の理解がしっかりしている生徒は、中学数学でも順調に理解を積み重ねることができます。一方で、算数の土台が不十分な場合、中学数学のどこかの段階でつまずく可能性が高くなります。
つまり、中学生になったときに見える学力差の多くは、実は小学生の段階ですでに始まっていることが多いのです。
高校受験は中学3年間の努力によって大きく左右されるものですが、そのスタートラインは中学入学よりも前、小学生の算数学習にあると言えるでしょう。だからこそ、小学生のうちに算数の土台をしっかり整えておくことが、将来の学力を伸ばすための大切な準備になるのです。
第7章 小学生のうちにできる算数の対策
ここまで、小学生算数が中学数学、そして高校受験に大きく影響することを説明してきました。しかし、「では具体的に何をすればよいのか」と疑問に感じる方も多いでしょう。
中学受験をしない小学生の場合、算数の対策は意外と難しい面があります。学校の授業だけでは思考力を鍛える問題量が不足しがちですが、かといって中学受験塾の算数は学習量も難易度も高く、負担が大きくなりすぎることもあります。
そこで現実的な方法は、高校受験につながる重要単元だけを重点的に強化することです。その際の学習の流れとしておすすめなのが、
①スタディサプリなどで基礎を理解する
②分野別問題集で思考力を鍛える
という二段階の学習方法です。
1 スタディサプリで重要単元の基礎を理解する
まず最初のステップは、算数の重要単元の基礎をしっかり理解することです。その際に役立つのがスタディサプリの小学生講座です。
スタディサプリでは、小学生算数の各単元が分かりやすく解説されており、学校の授業だけでは理解があいまいになりがちな部分を補うことができます。
分数や小数の計算以外では、特に次のような単元は、中学数学にもつながる重要な内容です。
・割合
・速さ
・図形
・規則性
例えば速さの単元では、「距離・時間・速さ」の関係を図や式を使って整理する考え方を学ぶことができます。こうした基礎理解をしっかり身につけておくことで、その後の応用問題にも取り組みやすくなります。
まずはスタディサプリの授業を利用して、単元の基本的な考え方を理解することが重要です。
2 理解した単元を分野別問題集で鍛える
基礎を理解したら、次のステップとして分野別の問題集に取り組みます。
ここでは、中学受験向けの分野別問題集が役立ちます。ただし、分厚い総合問題集を最初から解く必要はありません。薄手の問題集で特定の単元だけ練習する形でも十分効果があります。
例えば次のような形です。
・速さの問題だけ集中的に解く
・割合の問題だけ練習する
・図形の問題だけ取り組む
このように単元ごとに問題を解くことで、思考力を使った問題にも慣れることができます。
学校の算数では、どうしても問題量が少なくなりがちです。しかし問題集を使って少し多めに練習することで、数量関係を整理する力や図形を考える力が身についていきます。
私が娘に使わせた中でお勧めな問題集を紹介します。
・中学入試 分野別集中レッスン 算数 計算
・中学入試 分野別集中レッスン 算数 速さ
・中学入試 分野別集中レッスン 算数 場合の数
・中学入試 分野別集中レッスン 算数 平面図形
3 中学受験算数を全部やる必要はない
ここで重要なのは、中学受験算数をすべて学ぶ必要はないということです。
中学受験の算数にはかなり高度な問題も含まれており、高校受験を目指す場合には必ずしも必要ではない内容もあります。無理にすべてを学習しようとすると、学習量が多くなりすぎてしまいます。
大切なのは、中学数学の土台になる単元をしっかり理解することです。
スタディサプリで基礎を理解し、そのあとに分野別問題集で問題演習を行う。この流れで学習を進めれば、小学生の段階でも無理なく算数の力を伸ばしていくことができます。
小学生算数の理解を深めておくことは、中学数学の理解を助けるだけでなく、将来の高校受験に向けた大きな準備にもなるのです。
第8章 小学生算数を制する者が高校受験を制する
高校受験というと、多くの家庭では中学生になってから本格的に意識するものです。
しかし数学という教科に関して言えば、その準備はもっと早い段階から始まっています。実際には、小学生算数の理解がそのまま中学数学の理解につながり、最終的には高校受験の数学の得点にも影響していきます。
算数の差は、小学生のうちはあまり目立たないことがあります。学校のテストでは基本問題が中心になるため、大きな差が見えにくいからです。しかし中学生になると、方程式の文章問題、関数、図形の応用問題などが登場し、理解の差がそのまま得点差として現れるようになります。
そのときになって初めて、「数学が苦手になった」と感じる生徒も少なくありません。しかし多くの場合、その原因は中学数学そのものではなく、小学生算数の理解の差にあります。
だからこそ、小学生のうちに算数の土台をしっかり作っておくことが重要です。分数や割合、速さ、図形、規則性といった単元を理解し、数量関係を整理する力や図を見て考える力を身につけておくことで、中学数学の理解は大きく変わります。
もちろん、小学生の段階で中学受験の算数をすべて学ぶ必要はありません。大切なのは、高校受験につながる重要な単元を意識して学習することです。スタディサプリなどで基礎を理解し、分野別問題集で少し思考力を使う問題にも取り組む。このような学習を続けていくことで、算数の土台は着実に強くなっていきます。
高校受験は中学3年間の努力で決まるものですが、そのスタートラインはすでに小学生の算数の中にあります。小学生算数をしっかり理解している生徒ほど、中学数学でも自信を持って学習を進めることができるようになります。そしてその積み重ねが、高校受験での数学の得点力につながっていくのです。

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