小学校4年生になると、「急に算数が難しくなった」と感じる子どもが増えます。
それまで算数が得意だった子でも、テストの点数が下がったり、文章題で手が止まったりすることが珍しくありません。保護者の間でも「小4になって急に算数についていけなくなった」という声はよく聞かれます。
しかし、これは決して子どもの努力不足や能力の問題ではありません。小4は算数の内容が大きく変わる“構造的な転換点”だからです。
小1〜小3までの算数は、主に計算や基本的な文章題など「やり方を覚えて解く算数」が中心でした。ところが小4になると、問題の読み取りや考え方を組み立てる力が必要になり、「理解して考える算数」へと大きく変化します。
文章題の条件が複雑になり、図形や概数など抽象的な内容も増えるため、算数の難しさを急に感じやすくなるのです。
さらに重要なのは、小4算数は単なる学年の一単元ではなく、この先の数学につながる土台になっているという点です。
ここでの理解が不十分なままだと、小5・小6の算数だけでなく、中学に入ってからの数学にも影響が出てしまいます。
逆に言えば、小4算数のポイントをしっかり押さえておけば、その後の学習はぐっとスムーズになります。
この記事では、なぜ小4になると算数が難しく感じられるのか、その本当の理由を整理します。
あわせて、小4で多くの子どもがつまずくポイントや、家庭でできる対策についてもわかりやすく解説していきます。小4算数の壁を正しく理解し、子どもが算数を苦手科目にしないためのヒントを見つけていきましょう。
第1章 小4は「算数の構造」が変わる学年
小学校4年生の算数が難しく感じられる最大の理由は、単に問題が複雑になるからではありません。算数そのものの性質が変わる学年だからです。
小学校低学年から小3までの算数は、主に具体的な出来事を題材にした問題が多く、子どもがイメージしやすい内容が中心でした。しかし小4になると、算数は徐々に抽象的な内容へと変化していきます。
この変化にうまく対応できるかどうかが、算数が得意科目になるか、それとも苦手科目になるかを大きく左右します。
1 低学年の算数は「具体的な世界」の算数
小学校低学年から小3くらいまでの算数は、子どもにとって身近な生活を題材にした問題が多く登場します。
たとえば、
「1冊120円のノートを3冊と、1本100円の鉛筆を5本買いました。合計はいくらですか。」
といった問題です。
こうした問題は、「ノート」「鉛筆」「お金」といった日常生活でよく目にするものが登場します。そのため子どもは、実際に買い物をしている場面を思い浮かべながら考えることができます。
多少計算が複雑でも、問題の状況そのものは理解しやすいため、算数の問題として取り組みやすいのです。つまり低学年の算数は、具体的な世界をイメージしながら考える算数だと言えます。
2 小3から登場する「新しい数の概念」
しかし小学校3年生頃から、算数の内容は少しずつ変化していきます。ここで登場するのが、小数や分数といった新しい数の概念です。
整数だけを扱っていたときには、数は比較的イメージしやすいものでした。しかし小数や分数になると、数は少しずつ抽象的な性質を持つようになります。
たとえば「1.2」や「3/4」といった数は、具体的な物の個数ではなく、「量」や「割合」として扱われることが多くなります。このような数の扱いに慣れていない子どもにとっては、算数の世界が少し難しく感じられるようになります。
そして小4になると、この抽象的な数の扱いが本格的に増えていきます。
3 同じ割り算でも子どもには難易度が違う
ここで、次の2つの問題を考えてみましょう。
「8個のボールを4人で分ける」
「9.6メートルの糸を4等分する」
大人から見ると、どちらも「4で割る」という同じ内容の問題に見えるかもしれません。しかし小学4年生の子どもにとっては、この2つは同じようには感じられません。
ボールを分ける問題は、具体的な物をイメージできます。8個のボールを並べて、4人に配る様子を思い浮かべればよいからです。つまり、具体的な操作をイメージしながら考えることができる問題です。
一方で、9.6メートルの糸を4等分する問題はどうでしょうか。糸の長さを4つに分けるという状況は、ボールのように「配る」イメージを持ちにくく、さらに小数という概念も含まれています。そのため、子どもにとっては急に難しく感じられるのです。
このように、大人には同じ計算に見えても、子どもにとっては理解のしやすさが大きく異なることがあります。
4 身近な題材でも抽象的な問題は難しい
さらに重要なのは、題材が身近であれば必ずしも理解しやすいとは限らないという点です。
たとえば時計は、子どもにとって非常に身近な存在です。しかし算数の問題として
「長針と短針の間の角度を求めなさい」
という問題になると、多くの子どもが急に難しく感じます。
時計自体は日常生活でよく見ているものですが、「針の角度」を考えることは、日常生活の中でほとんど意識しない内容だからです。つまり題材は身近でも、考える内容が抽象的になると理解の難易度は一気に上がるのです。
小4の算数では、このような問題が少しずつ増えていきます。
5 小5以降の差は実は小4から始まっている
よく「小5以降は割合・比・速さで差がつく」と言われます。確かにこれらの単元は、多くの子どもが苦手にする内容です。
しかし実際には、その差が突然生まれるわけではありません。多くの場合、小4の段階で抽象的な内容を十分に理解できないまま、「解き方だけ覚えて」先へ進んでしまいます。
そして小5になると、割合や速さといったさらに高度な概念が登場するため、それまで曖昧だった理解が一気に表面化します。
つまり、小5で目に見える差が生まれているように見えても、その原因は小4の算数の理解にあることが多いのです。
その意味で、小学4年生の算数をどのように学ぶかは非常に重要です。この時期に算数の考え方をしっかり理解できるかどうかが、その後の算数・数学の学習に大きな影響を与えることになります。
第2章 理由① 文章題が一気に難しくなる
小4算数で多くの子どもがつまずく最大の理由の一つが、文章題の難易度が急に上がることです。
低学年の頃にも文章題はありましたが、小4になると問題の性質そのものが変わります。単に計算をするだけではなく、問題文を読み取って状況を整理する力が求められるようになるのです。
1 まずは次の文章題を読んでみてください
次の問題を見てください。
ももこさんの拾ったどんぐりの数は、あと4こで30こになります。
ななこさんは、ももこさんの2倍の数のどんぐりを拾いました。
ななこさんの拾ったどんぐりの数はいくつでしょう。
この文章題を読んで、どう感じたでしょうか。
もちろんこれは小学校の算数としてはごく基礎的な問題です。大人であれば、ほとんどの人が解くことができるでしょう。しかし、多くの大人はこの問題を一度読んだだけで、瞬時に答えが浮かぶわけではありません。いったん問題の内容を整理し、
・ももこさんのどんぐりの数
・「あと4こで30こ」という条件
・ななこさんはその2倍
という情報を頭の中で組み立ててから、ようやく答えにたどりつきます。
つまりこの問題は、問題文の内容を整理する作業が必要なのです。
2 低学年の文章題は「数字をそのまま使う問題」が多い
低学年の文章題は、比較的シンプルなものが中心です。
例えば、
「えんぴつを2本持っています。3本もらいました。全部で何本ですか。」
このような問題では、文章の中に出てくる数字をそのまま使えばよいことが多く、
2 + 3
という計算にすぐ結びつきます。
つまり、問題文に出てくる数字をそのまま加工する算数だったのです。
言い換えれば、「鉛筆2本と3本を足す」というように、状況を深く整理しなくても解ける問題が多かったのです。
3 小4の文章題は「内容を整理しないと解けない」
しかし先ほどのどんぐりの問題はどうでしょうか。
問題文の中には「30」という数字が出てきますが、それがそのまま答えになるわけではありません。「あと4こで30こ」という条件を読み取り、
ももこさんの数
= 30 − 4
と考える必要があります。
さらに、ななこさんのどんぐりは「ももこさんの2倍」ですから、
(30 − 4)× 2
という計算になります。
このように、小4の文章題では
・問題文の意味を読み取る
・条件を整理する
・計算の順番を考える
という複数の思考のステップが必要になります。
これは低学年までの文章題とは大きく違う点です。
4 小4算数では「問題を読み解く力」が必要になる
ここで重要なのは、小4の文章題は計算の難しさよりも、問題文の理解が難しいという点です。
どんぐりの問題にしても、計算自体は
30 − 4
その結果 × 2
という非常に簡単なものです。
それでも子どもがつまずくのは、
・どの数字を使うのか
・どの順番で計算するのか
・何を求めればよいのか
を整理することが難しいからです。
つまり小4の算数では、単に計算力があればよいわけではなく、問題文を読み解く力が必要になります。
優秀なお子さんであれば、特別な訓練をしなくても自然に理解できるかもしれません。
しかし標準的な小4生にとっては、この「問題を読み解く力」は自然には身につきません。ある程度の訓練や経験が必要になります。
5 文章題が苦手になる原因はここにある
小4算数で文章題が苦手になる子どもは少なくありません。しかしそれは算数が苦手というよりも、
文章を整理する力がまだ育っていない
というケースが多いのです。
算数の文章題は、実は
・読解力
・論理的思考
・情報整理
といった力も必要になります。
そのため小4算数では、単に計算問題を解くだけでなく、文章題にしっかり取り組むことが重要になります。文章題を通して「問題の状況を整理する力」を身につけることが、算数の理解を大きく深めることにつながるのです。
第3章 理由② 変わり方・概数など抽象概念が増える
小4算数が難しく感じられるもう一つの理由は、抽象的な考え方を必要とする単元が増えることです。
小4では、概数・変わり方・数量関係など、それまであまり意識してこなかったテーマが登場します。これらは単純な計算問題とは違い、数量の関係を理解する力が必要になります。
1 次の問題を読んでみてください
次の問題を見てください。
兄と弟でえんぴつ16本を分けます。
兄の分を弟の分より、10本多くするには、それぞれ何本ずつ分かればよいでしょう。
答えは、以下の通りです。
兄:13本
弟:3本
大人が見れば、それほど難しい問題ではありません。しかし、小学生にとってはかなり戸惑うタイプの問題です。
2 数字をそのまま使えない問題
小学生がこの問題に戸惑う理由は、数字をそのまま計算に使えないからです。
問題文には
16本
10本
という数字が出てきます。しかし、この
16と10をそのまま足したり引いたりしても、答えである「13と3」は出てきません。
低学年までの算数では、
2と3 → 足す
12と4 → 引く
のように、出てきた数字をそのまま加工すれば解ける問題が多くありました。
しかしこの問題はそうではありません。条件は
・合計は16本
・兄は弟より10本多い
という数量の関係です。この関係を理解しないと解くことができません。
3 実は方程式の考え方と同じ
この問題は、中学生の数学の視点から見ると、実は方程式で表すことができます。
弟の本数を 本とすると、
兄は
になります。
そして合計は16本なので
という式になります。
この式を解くと
つまり
弟:3本
兄:13本
となります。
もちろん小4では方程式はまだ習いません。しかし実際には、方程式と同じ構造の問題にすでに取り組んでいるのです。
4 小学生は「数量の関係」を考える経験が少ない
この問題が難しく感じられる理由は、小学生がまだ数量の関係を整理する経験が少ないからです。
子どもは問題を見ると、
「16と10をどう計算するのだろう」
と考えてしまいます。しかし本当に考えるべきなのは、
・2人の合計は16
・兄は弟より10多い
という関係です。
この関係を図にしたり、試しに数を入れてみたりして整理できるようになると、問題は解きやすくなります。
5 小4から算数は「関係を考える科目」になる
このような問題が増えることが、小4算数の大きな特徴です。
低学年までは数そのものを計算する算数が中心でした。
しかし小4以降は、数と数の関係を考える算数へと変わっていきます。
概数や変わり方の学習も、実はこの「関係を考える力」を育てるためのものです。
この変化に慣れていない子どもは、計算自体はできるのに問題が解けないという状況に陥ることがあります。これは能力の問題ではなく、算数の考え方が変わったことにまだ慣れていないだけなのです。
小4算数では、このような数量関係の問題を通して、中学数学につながる思考力の基礎が少しずつ育っていきます。したがって、この時期にこうした問題に丁寧に取り組むことが、その後の数学の理解を大きく助けることになります。
第4章 理由③ 図形の難易度が上がる
小4算数でつまずきやすいもう一つの理由が、図形の学習の質が大きく変わることです。
低学年でも三角形や四角形、円などの図形は登場しますが、小4になると図形は単に形を覚えるものではなくなり、数値や性質を使って理解する内容へと変化します。
1 低学年の図形は「形を覚える算数」
小学校低学年の図形学習では、主に形そのものを認識することが中心です。
例えば、
・三角形
・四角形
・円
といった図形の名前や形を覚える学習です。
この段階では、「形として区別できるかどうか」が重要です。子どもは三角形や四角形を見て、「これは三角形」「これは四角形」と判断できればよいのです。つまり、低学年の図形は視覚的に理解する算数だと言えます。
2 小4から図形は「数値で考える世界」になる
しかし小4になると、図形の学習は大きく変わります。代表的なのが面積の学習です。
面積では、図形の広さを
平方センチメートル
平方メートル
といった数値で表すことになります。
大人にとっては、広さを数値で表すことは非常に自然なことです。しかし子どもにとっては、これは決して当たり前のことではありません。
それまで図形は「形」として理解していたものなのに、そこに突然「数値」という概念が持ち込まれるからです。
つまり、形の世界に数の世界が入ってくるという新しい学習が始まるのが、小4の図形なのです。この変化に戸惑う子どもは少なくありません。
3 図形の「性質」を本格的に学ぶようになる
さらに小4では、図形の性質についても本格的に学び始めます。ここで多くの子どもが混乱するのが、図形の定義や条件を考える問題です。
例えば次のような正誤問題です。
「正方形は、4辺が等しい四角形である。」
この問題に「〇」をつけたところ、答案に「×」がついて驚く子どもが少なくありません。
子どもからすると、
「正方形は4辺が等しいじゃん。あってるでしょ!」
と思うからです。
しかし数学的に考えると、4辺が等しい四角形はひし形です。4辺が等しいからといって、それが必ず正方形とは限りません。正方形であるためには、4つの角がすべて直角である必要があります。
つまり
・4辺が等しい → ひし形
・4辺が等しく、4つの角が直角 → 正方形
という違いがあるのです。
4 子どもにとっては「だまし討ち」に感じる
このような問題は、大人にとっては自然なロジックです。しかし子どもにとってはそうではありません。
子どもはこれまで、図形を「見た目」で判断してきました。そのため、「正方形は4辺が等しい」という説明は、感覚的には間違っていないように感じます。
それなのに「×」とされると、大人にだまし討ちされたような感覚になることがあります。
これは子どもが間違っているというよりも、図形の見方が変わる時期にいるから起こることです。
5 図形もまた抽象的な世界へ進んでいく
小4の図形学習では、
・面積を数値で考える
・図形の性質を条件で理解する
といった、新しい考え方が必要になります。
つまり図形もまた、見た目で判断する世界から、論理で理解する世界
へと変わっていきます。
この変化に慣れるまで、子どもは戸惑うことがあります。しかしこの段階を乗り越えることで、図形を論理的に考える力が少しずつ育っていきます。これは中学数学の図形問題にもつながる、非常に重要な基礎となる力なのです。
第5章 理由④ 算数が「積み上げ型」になる
小4算数が難しく感じられるもう一つの理由は、算数がはっきりと「積み上げ型の教科」になることです。つまり、それまでに学んだ内容が理解できていることを前提として、新しい内容が進んでいきます。
この特徴は低学年の頃からあるのですが、小4になるとその影響がはっきり表れ始めます。
1 小4でつまずく内容は実は小3で習っている
小4で苦手になる子が多い内容として、分数や小数があります。しかし実は、これらは小4で初めて登場するわけではありません。分数や小数の基礎は、すでに小3の段階で学んでいます。
例えば次のような問題です。
3/5ℓ − 2/5ℓ
この問題は分数の計算ですが、小学生でも比較的解きやすいものです。同じ分母なので、
5分の(3 − 2)
と考えることができます。
しかしここで注意したいのは、分数の仕組みを深く理解していなくても、感覚的に解けてしまうことがあるという点です。
2 感覚だけでも解けてしまう小3算数
小3までの算数は、ある程度「感覚」で解けてしまう部分があります。
例えば、
3/5 − 2/5
という問題を見ると、多くの子どもは「3 − 2でいいのかな」という感覚で計算します。
もちろんこれは結果として正しいのですが、必ずしも
・分母が同じとはどういう意味か
・分数は何を表しているのか
といった内容を深く理解しているとは限りません。それでも問題が比較的シンプルなため、答えが出てしまうことがあります。
つまり小3までの算数では、多少理解があいまいでも感覚で乗り切れてしまう場面があるのです。
3 小4になると「感覚のごまかし」がきかなくなる
ところが小4になると、この状況が変わります。
小4では
・小数の計算
・面積
・数量関係
・文章題
などが増え、考える手順も複雑になります。
その結果、これまで感覚で解けていた算数が、論理的に理解していないと解けなくなる場面が増えてきます。
つまり、
感覚の算数 → ロジックの算数
へのシフトが起こるのが、小4という学年なのです。
これまで何となく解けていた問題が急に解けなくなるのは、能力が落ちたわけではありません。算数の求められる力が変わったからなのです。
4 この変化は親が見逃しやすい
実はこの変化は、保護者の方が見逃しやすいポイントでもあります。特に、学生時代に算数や数学が得意だった方ほど、この変化に気づきにくい傾向があります。
例えば、日東駒専以上の大学を卒業された保護者の方であれば、小4算数の問題はほとんど苦労せずに解くことができるでしょう。問題を見れば、すぐに答えがわかることも多いと思います。
しかしそれは、大人がすでに
・分数の意味
・数量の関係
・図形の考え方
といったロジックを自然に理解しているからです。
子どもはまだその段階に到達していません。そのため、子どもが問題を解けないと
「こんな簡単な問題がどうしてできないの?」
と感じてしまうことがあります。
5 小4は算数の理解が分かれる重要な学年
学生時代に塾などで指導経験がない場合、子どもが算数でつまずく場面を見ると、つい頭ごなしに叱ってしまうことがあります。
しかし実際には、多くの場合、算数の考え方がまだ整理できていないだけなのです。
小4は、算数が感覚で解ける教科から論理で理解する教科へと変わる重要な時期です。
この変化を理解していないと、「今までできていたのに急にできなくなった」と感じてしまいます。しかし実際には、算数のレベルが一段階上がっただけなのです。
その意味で、小4算数は子どもにとっても保護者にとっても、算数との向き合い方を考え直す大切なタイミングだと言えるでしょう。
第6章 小4算数で特につまずきやすい単元
ここまで見てきたように、小4算数は学習の性質そのものが変わる学年です。そのため、いくつかの単元でつまずく子どもが一気に増えます。
特に小4で苦手になりやすい単元として、次のようなものが挙げられます。
・わり算の筆算
・角度
・面積
・概数
・文章題
これらはどれも、低学年の算数とは違う考え方を必要とする内容です。ここでは、それぞれがなぜ難しく感じられるのかを見ていきましょう。
1 わり算の筆算
小4算数で最も重要な単元の一つがわり算の筆算です。
小3でもわり算は学習しますが、小4になると桁数が増え、本格的な筆算として扱われるようになります。
例えば、
84 ÷ 4
のような問題であれば比較的簡単ですが、
736 ÷ 4
945 ÷ 5
のように桁数が増えると、
・どこから割るのか
・次の桁をどう下ろすのか
・あまりをどう扱うのか
といった手順を理解する必要があります。
この手順があいまいなままだと、わり算は一気に苦手になります。
そして重要なのは、わり算は中学数学の基礎でもあるという点です。
わり算が不安定だと、
・分数
・方程式
・比例
などの理解にも影響します。
例えば分数は「割り算の別の表現」とも言えますし、方程式でも
3x = 12 → x = 4
のように、割る操作が必ず登場します。
つまり、わり算の筆算は単なる計算練習ではなく、数学の基礎を支える重要な技術なのです。
2 角度
図形の単元で多くの子どもがつまずくのが角度です。
低学年までの図形は、三角形や四角形といった形を見分ける学習が中心でした。しかし小4になると、図形を「角度」という数値で考えるようになります。
例えば、
・直角
・180度
・三角形の角度の関係
などです。
ここでは分度器を使う操作も必要になります。分度器の目盛りを正しく読むこと自体が難しい子どもも少なくありません。
また、図を見ながら角度を求める問題では、単なる計算ではなく図形の関係を考える必要があります。これが図形を苦手に感じる原因になります。
3 面積
小4で初めて本格的に登場するのが面積です。
面積では、
・1㎠
・1㎡
といった単位を使って、図形の広さを数値として表します。
これは大人にとっては自然な考え方ですが、子どもにとっては
形を数値で表す
という新しい考え方になります。
さらに、
長方形の面積
= たて × よこ
という公式を使う必要もあります。
公式の意味を理解していないと、ただの暗記になってしまい、少し形が変わった問題になると解けなくなります。
4 概数
小4では概数(がいすう)という単元も登場します。
概数とは、数を「だいたいの数」で表す考え方です。例えば、
367 → 約400
のように、四捨五入して表します。
これは日常生活ではよく使う考え方ですが、算数として学ぶと混乱する子どもが多い単元でもあります。
なぜなら、それまでの算数では「正確な数」が常に正しい答えだったからです。
ところが概数では、
・正確ではない数を使う
・目的に応じて数を丸める
という、これまでとは違う発想が必要になります。
5 文章題
そして多くの子どもが苦手にするのが文章題です。
文章題では、
・問題の条件を読み取る
・数量関係を整理する
・計算の順序を考える
といった複数の思考が必要になります。
計算自体はそれほど難しくなくても、問題文を整理する段階で手が止まってしまう子どもは少なくありません。
つまり文章題は、算数の問題でありながら、読解力や論理力も必要になる問題なのです。
6 小4は算数の「最初の分岐点」
このように小4算数には、これまでの算数とは違う要素が一気に増えます。
・計算の複雑化
・図形の理解
・抽象概念
・文章の読み取り
といった要素が重なり、多くの子どもにとって算数が急に難しく感じられるのです。
しかし逆に言えば、この段階で
・わり算
・図形
・数量関係
といった基礎をしっかり理解できれば、その後の算数や中学数学はぐっと楽になります。
小4算数は、算数が得意になるか苦手になるかを分ける最初の大きな分岐点と言えるでしょう。
第7章 家庭でできる対策
ここまで見てきたように、小4算数は学習の性質そのものが変わる学年です。そのため、まず保護者の方に持っておいてほしい前提があります。
それは、小4の算数を学校の授業だけで完全に理解できる子どもは、実はそれほど多くないということです。
1 「学校だけで理解できない=落ちこぼれ」ではない
保護者の方の中には、「小4の算数くらい学校の授業で理解できないと、中学や高校でついていけなくなるのではないか」と心配される方も少なくありません。
しかし実際には、小4算数の内容はすでにかなり抽象度が高く、授業だけで完全理解するのは優秀なお子さんに限られることも多いのが現実です。
多くの子どもは、
・授業
・家庭学習
・問題演習
といった複数の経験を通して、少しずつ理解を深めていきます。
ですから、小4算数が学校の授業だけで完全に理解できなくても、必要以上に心配する必要はありません。
2 小4の問題は大人でも一瞬では解けない
実際に、小4の標準的な問題集には次のような問題が出てきます。
・42 × 99 = 42 × □ − 42
・144をある数でわった商と6の和に、4をかけた積が72になります。
・841 ÷ □ = 31 あまり4
・四捨五入して百の位までのがい数にしたとき、4500になる整数はどんな範囲にあるでしょう。
これらはすべて、小4の標準的な問題集に出てくる内容です。
しかし大人が見ても、ぱっと見ただけで瞬時に解ける問題はそれほど多くありません。
例えば、
42 × 99 = 42 × □ − 42
という問題では、□には100が入ります。
つまり
42 × 99
= 42 × (100 − 1)
= 42 × 100 − 42
という考え方です。
答えを見れば理解できても、「なぜそうなるのか」を説明できる大人は意外と多くありません。
つまり、小4算数は計算そのものよりも、考え方を理解する問題が増えてくるのです。
3 小4算数では「読み解く力」が必要になる
小4算数では、問題を見た瞬間に解き方がわかる問題はかなり減ってきます。
代わりに必要になるのが、問題を読み解く力です。
例えば文章題では、
・何が条件なのか
・何を求めるのか
・どんな関係があるのか
を整理しないと、計算の方針が立ちません。
これは計算練習だけでは身につかない力です。文章を読んで状況を理解する経験が必要になります。
4 家庭でできる一番効果的な方法
家庭でできる対策として、最も効果的なのは親子で一緒に問題を読み解くことです。
ここで大事なのは、親がすぐに答えを教えることではありません。
例えば、
「この問題は何を聞いているの?」
「条件はどこに書いてある?」
「図にするとどうなるかな?」
といった形で、子どもが問題の内容を整理する手助けをしてあげることです。
このような経験を積み重ねることで、子どもは少しずつ「問題の読み方」を身につけていきます。
5 家庭で対応が難しい場合
とはいえ、すべての家庭で毎日算数を一緒に見るのは簡単ではありません。
保護者の方も忙しく、算数を教える時間を確保するのが難しい場合もあるでしょう。
そのような場合は、オンライン授業を活用するのも一つの方法です。
例えばスタディサプリのようなサービスでは、プロの講師が算数の考え方を丁寧に説明してくれます。学校の授業とは違う視点で解説を聞くことで、理解が深まる子どもも少なくありません。
家庭で無理に教えようとして親子関係がぎくしゃくしてしまうよりも、こうしたサービスをうまく活用する方が効果的なこともあります。
その上で、市販の小4算数の問題集に取り組むと、理解が一段と進むはずです。
6 小4算数は「理解する経験」を増やすことが大切
小4算数で大切なのは、問題をたくさん解くことよりも考え方を理解する経験を増やすことです。
この時期に、
・文章を読み解く力
・数量関係を整理する力
・図形を論理的に考える力
が育つと、その後の算数や中学数学は格段に理解しやすくなります。
小4算数は確かに難しく感じられる学年ですが、ここで丁寧に理解を積み重ねていくことが、算数を得意科目にする大きな土台になるのです。
第8章 小4算数との向き合い方を考える
ここまで、小4算数が難しくなる理由を見てきました。
最後に、小4算数とどう向き合うべきかという視点について少し触れておきたいと思います。
小4算数は内容の質が大きく変わる学年であるため、問題の作り方次第で“難問”を作りやすい学年でもあります。難問とまではいかなくても、小4生にとっては理解するのに少し時間がかかる問題が、学校のテストにも普通に出てきます。
1 小4は「理解させるのに時間がかかる問題」が増える
小4算数では、問題の条件を読み解いたり、数量関係を整理したりする問題が増えます。
そのため、問題自体はそれほど高度ではなくても、小4生にとっては理解するまでに時間がかかることがあります。
実は、私自身も娘が小4のときに、学校のテストで満点を取らせるために、市販のドリルを買ってトレーニングを積んだことがあります。
ところが、思っていた以上に時間がかかるのです。
もちろん解けるようにはなるのですが、「小4の子どもにここまで理解させる必要があるのだろうか」と感じる問題も少なくありませんでした。
2 学年が上がると自然に理解できる問題も多い
興味深いのは、小5や小6になると、「小4のときになんでこんな問題に苦労したのだろう」と思うことが多い点です。
これは決して小4のときの努力が無駄だったわけではありません。子どもの抽象的な思考力が成長するからです。
小4の段階ではまだ抽象的な思考力が十分に育っていないため、理解に時間がかかる問題もあります。しかし学年が上がるにつれて、数量関係や論理的思考を自然に理解できるようになっていきます。
そのため、小4の段階で完全理解を目指して何時間もかけるより、少し先の内容に進んだ方が効率的な場合もあるのです。
3 私が選んだ学習方針
そこで私は、途中から方針を変えました。
小4のドリルに時間をかけるのをやめて、次の内容に進むことにしたのです。
具体的には、
・分母が同じ分数の足し算・引き算
・分母が違う分数の足し算・引き算
・最小公倍数
・分数のかけ算・わり算
・中学受験レベルの分数
・小数の四則混合計算
といった内容に進みました。
そして小5では、
・中学数学
・割合
・比
・速さ
・面積比
など、高校受験を逆算した勉強に切り替えました。
4 先取り学習が高校受験の大きな武器になる
現在、小6ですが、すでに中3レベルの数学までざっと触れるところまで進みました。
もちろん完璧に解けるというわけではありませんが、「中学数学を見たことがある」という状態になっています。
これは高校受験において、かなり大きなアドバンテージになるはずです。
中学に入ってから数学に余裕が生まれれば、
・英語
・理科
・社会
など、他の科目にも時間を使うことができるからです。
5 小4算数は「完璧を目指さない」という選択肢もある
もちろん、この学習方針は中学受験を目指す家庭にはリスキーです。
中学受験では、小学校算数の内容を徹底的に理解することが求められるため、小4算数を完全に理解することは非常に重要になります。
しかし、高校受験を目指す場合は少し事情が変わります。
高校受験では最終的に問われるのは中学数学です。
そのため、小4算数のすべてを完璧に理解することにこだわりすぎるよりも、
・重要な基礎を押さえる
・先の学習に進む
という選択肢も十分に考えられます。
小4算数は確かに難しく感じられる学年ですが、必ずしも「すべてを完璧に理解しなければならない」と考える必要はありません。
高校受験を見据える家庭にとっては、あえて小4算数で完璧を目指さないという考え方も、一つの有効な学習戦略なのです。
まとめ 小4算数は「算数の質が変わる学年」
小4算数が難しく感じられるのは、単に問題が複雑になるからではありません。算数の学び方そのものが変わる学年だからです。
低学年では計算中心だった算数が、小4になると文章題、数量関係、図形の性質など、考え方を理解する算数へと変わります。そのため、学校の授業だけでは十分に理解できない子どもも少なくありません。
大切なのは、小4算数を「できない」と決めつけることではなく、問題を読み解く力や数量関係を整理する力を少しずつ育てていくことです。家庭でのサポートやオンライン授業なども活用しながら、算数を理解する経験を積み重ねていきましょう。

コメント